学部学科・大学院

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  3. 【松本大学大学院】健康科学研究科(大学院)研究テーマ紹介

①ホルモンや栄養素による遺伝子の発現制御機構
②発がんによる遺伝子の発現制御機構

健康科学研究科長/教授山田 一哉

プロフィール

私の研究室では、以下の2つのテーマについて研究を行っています。

①ホルモンや栄養素による遺伝子の発現制御機構
 ヒトを含む動物は、生きていく上で外部からエネルギー源である食物(栄養素)を摂取しなければなりません。栄養素は、体内に取り込まれた後、酵素反応により様々な物質へと代謝されて体構成成分やエネルギーになります。しかし、ヒトは24時間摂食し続けているわけではないため、食事の前後で体内の代謝は変化するようになっています。たとえば、食後には体内に入ってきた過剰のエネルギー源を貯蔵する方向に反応が進みますが、絶食が続くときには貯蔵した物質を分解する方向に反応が進みます。この代謝方向の変化に関わるのが内分泌器官から分泌されるホルモンや栄養素です。
 私たちは、インスリンという血液中のブドウ糖濃度(血糖値といいます)を低下させるホルモンやブドウ糖により、食後の肝臓でSHARPファミリー遺伝子のスイッチがオンになることを見つけました。また、SHARPファミリーが血糖値を上昇させる酵素の遺伝子のスイッチをオフにすることも見つけました。ですので、SHARPファミリーがインスリンによる血糖値低下にかかわる因子であると考えて研究を行っています。また、インスリン以外の物質でSHARPファミリー遺伝子のスイッチをオンにできれば、インスリンがうまく働かないためになる糖尿病という病気の予防や治療につながると考えて研究しています。

②発がんによる遺伝子の発現制御機構
 がん細胞は、ブドウ糖をたくさん消費してエネルギーを得て、分裂を繰り返して細胞数を増やしています(増殖といいます)。私たちは、がん細胞でだけ見つかるブドウ糖を代謝する酵素の遺伝子を複数比較して共通のスイッチを見つけ、そのスイッチをオフにする可能性があるものとして、ZHX1,ZHX2およびZHX3の3種類のタンパク質を見つけました。その後、ZHX1はおもに細胞増殖(あるいは発がん)のアクセルとして、ZHX2やZHX3はブレーキとして働くことを見つけています。ですので、がん細胞にZHX2やZHX3を作らせれば、がん細胞の増殖をおさえる(がんを治す)ことができるのではないかと期待して研究しています。

腎臓と運動の関係に関する研究とスポーツ障害おもに膝の障害に関する研究

教授江原 孝史

プロフィール

① 運動選手の腎機能を正しく評価するための研究
腎臓は血液をろ過してきれいにしますが、その腎臓の機能を調べるのに、糸球体ろ過量を測定することが行われます。それには血中と尿中のクレアチニンを測ってクレアチニンクリアランスを求め、糸球体ろ過量を調べます。しかし、この値を調べるのはやや大変なので、血清クレアチニンの値から、糸球体ろ過量を推定する式が開発され推定GFR (eGFR)と呼ばれ現在広く使われています。しかし、この式は、平均的な体格と筋肉量を持った成人が対象で、やせた筋肉量の少ない人はもとからクレアチニンの値が低いのでeGFRの値は高くなってしまい腎機能は良好であると評価されてしまいます。逆にアスリートのように筋肉量の多い人はもともとクレアチニンの値が高いので、eGFRは低くなってしまい腎機能は低下していると評価されていまいます。そのためこの推定式はそういった筋肉量が平均からはずれる人の場合には使えません。現在ではインピーダンス法を用いて、体の電気的な抵抗を測定して体の筋肉、脂肪量、骨量を正確に推定することが容易になっています。研究では、主に運動選手の血清クレアチニンと体組成計によって求めた筋肉量から、eGFRを筋肉量で補正した推定GFRを求め、運動選手の正確な腎機能を評価できる式を算出することを目的とします。

② 腎臓病と運動療法
以前は腎臓病の人は、運動は禁忌で安静がよいとされていました。しかし近年の研究では腎不全の人にも、糖尿病にように運動療法が有効であることが明らかになってきました。しかしこの分野はまだ歴史も浅く、日本では広く普及するには至っていません。腎臓病の重症度を血液データ、生検組織の病理組織学的な所見にもとづいて評価し、適切なリハビリ、運動療法についての研究をすすめます。腎臓病のほか、心臓病、肺などの病気に対する運動療法についても研究します。

③ スポーツ障害
 膝の障害はスポーツ障害のなかでも最も多い。また加齢による変形性関節症も膝がその大半を占める。ひざの障害の特徴について、主に変形性関節症によって手術的に採取された靭帯、関節および軟骨の障害のパターンや程度をミクロスコピックなレベルで調べます。

「ヒトにおける運動制御機構の解析」

教授進藤 政臣

プロフィール

 研究テーマを分かりやすくいうと,どのような神経メカニズムで運動がスムーズに行われているのかを明らかにするものです.健康にとって運動は不可欠なものですが,日常生活の中で手足や身体を動かす時には(余り意識しませんが),筋肉の働き(すなわち運動細胞の活動)というのはミリ秒のレベルでものすごく詳細にコントロールされています.
 例えばサッカーボールを蹴るという動作を考えてみましょう.蹴る側の足を一定の角度に固定し(ということは,足を伸ばす筋と曲げる筋が両方収縮している必要があります),素早く膝関節を伸ばし股関節を曲げることが必要です.この時,反対の作用をする膝を曲げる筋や股関節を伸ばす筋の活動は抑えておく必要があります.またこれらの動作が行われる為には,反対側の脚が体重を支え,バランスを保つ必要があります.さらに背筋や腹筋,上肢の筋を同時にうまく収縮させる必要があります.これらの運動が時々刻々変化する中で,各筋の活動は瞬時にコントロールされています.このようにボールをうまく蹴るためには,全身の筋の素早い制御が必要であることは容易に想像できることでしょう.
 このような複数の筋肉(運動細胞)に対する詳細な制御があって初めて,運動は不自由なく行われるはずです.運動細胞には沢山の情報が集まっています.そしてその運動細胞の活動を制御するために,多くの神経回路が存在します.私たちはヒトを対象にしてこれらの神経回路の活動性はどうなっているのか,運動に伴って運動細胞や神経回路の活動性がどのように制御されているのかを調べています.また,運動は練習の熟達することが一般的です.子供のヨチヨチ歩きからしっかりと歩行できるようになるのもそうですし,スポーツでの練習による技能向上も当てはまります.目的とする神経回路の活動性が,長い期間に亘る運動練習によってどのように変化するのかをみるのも私たちの研究目的の一つです.
 これら運動制御機構の解析という研究によって,運動がいかにしてコントロールされるのか,運動生理学における知見を明らかにできますし,病的な状態(患者さん)を調べることによって,運動障害のメカニズムも明らかにすることが可能です.また運動学の基礎的データを提供できることが期待できますし,さらにはロボットの制御などにも応用は可能なものと考えています.

 例えば字を書くという動作を考えてみましょう.鉛筆を持って,それをなめらかに動かすことが要求されます.鉛筆を持つのに指がスムーズに曲がるためには,曲げる筋肉が適当な速さで過不足なく収縮し,一方で一緒に働く筋肉の活動を高めながら,他方でこの筋肉に拮抗する働きを持つ筋肉の活動を抑えなければなりません.その上で指がうまく動くためには手首の運動も指の運動に伴ってその時々で制御されなくてはなりません.これらの運動が時々刻々変化する中で,指の動きは瞬時にコントロールされています.字がうまく書けるためには,鉛筆を持っている指だけではなく,一緒に働く他の指や手首の動きのコントロールも必要ですし,そのためには腕全体の制御も,そしてその時の首の角度や姿勢の制御も必要になることは容易に想像できることでしょう.

「実践栄養学」分野の研究

教授廣田 直子

プロフィール

 「私たちの健康は、私たちが食べるものと強く関連している」ということは、多くの人が認識しています。子どもたちは、大人たちから「そんな食べ方をしていると、病気になっちゃうよ!」といわれ、テレビを見れば、健康の維持増進や病気予防に効果があるという食品や栄養成分を取り上げた番組やコマーシャルが目に入ってきます。
 私たちの研究室では、「人はどのように食べているのか」「どのようにしたら、食を中心としたより良い生活習慣を獲得し、維持できるのか」などについて考える「実践栄養学」分野の研究に取り組んでいます。
 2013年2月に厚生労働省が2010年の都道府県別平均寿命を発表しましたが、長野県は男性80.88歳、女性87.18歳でともに全国1位でした。そこで、長野県民はどんな食べ方をしているのかということに注目が集まり、いろいろなメディアから問い合わせなどがあったり、講演依頼をいただいたりしました。しかし、長野県の長寿の要因については、研究が充分なされている状況とはいえません。
 「○○という成分と△△という病気とは関連がある」という研究は、細胞レベルでの実験や動物実験で確認されることも多いのですが、栄養教育を進めていくには、私たちはどのように食べればよいのかを考える必要があります。つまり、人を対象とした研究が必要ということになります。
 例えば、高コレステロール血症(特に、高LDL-コレステロール血症)は心筋梗塞の危険因子ですが、食事からたくさんのコレステロールを摂ると高コレステロール血症になるのでしょうか。そのことを明らかにするためには、「摂取量の多い人では、摂取量が低い人に比べて、血清コレステロール値が高い」というような研究データが必要になります。この場合のこの食事中のコレステロールの量はどのように調べるのでしょう。そうです、食事調査によって調べるわけです。もし食事調査の精度が低く、得られたデータが間違っていたとしたら、「このように食べたほうが健康的である」という根拠が揺らいでしまうことになります。
 私たちの健康と食べ方について、どのような食品をどのように調理して何をどれくらい摂ればいいのかを人を対象として検証するためには、そのベースとなる精度の高い食事調査が必要になるというわけです。しかし、人、特に日本人を対象とした食事調査は容易ではありません。私たちの研究室の研究テーマのひとつは、食事調査手法に関する研究です。実践栄養学や栄養疫学の発展には不可欠な研究分野です。
 そして、もう一つの研究の柱は、できるだけ信頼性の高い食事調査を組み入れつつ、どのような働きかけを行えば、人々はより良い食習慣を獲得できるのだろうかという分野での研究です。より良い食習慣を考えるときには、もちろん健康的な食事が重要ですが、私たちの生活環境全体を見通した食べ方というものも必要になります。「栄養教育」だけではなく「食育」といった視点で考えることも不可欠だと考えています。私たちの周りの食環境は、人々が互いに関連し合う中でつくられているとすれば、人と人とのネットワークの広がりや強さも私たちの食べ方や健康づくりに関連してくるでしょう。
 長野県の長寿の要因はそのあたりにあるのかもしれないと考えつつ、食生活にフォーカスした研究に取り組んでいます。

最近の研究テーマ

スポーツ健康学科長/教授根本 賢一

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(運動量を計測するための活動量計およびアプリケーションの開発)
 歩行を中心とする日常生活での運動量から、スポーツ活動のような激しい動きに対しても正確に運動量を計測できる活動量計と、計測した運動量を用いて効果的に「健康づくり」を支援するためのアプリケーションの開発を行っている。

(中高齢者を対象とした運動プログラムの提供)
 主に、中高年者、虚弱者を対象に生活習慣病予防や体力の維持増加を目的に、インターバル速歩や筋力トレーニングを取り入れたプログラムの開発を行っている。また、日常の習慣的な運動が、身体に及ぼす影響及び運動の効果を予防医学的な視点から、科学的に検証している。

(リゾート施設における健康づくりプログラムの開発及び効果検証)
 リゾート施設における健康づくりプログラムを開発し、これまでに約3,000名が利用している。このプログラム実施が、人に何をもたらすのか?また、リゾート地の近隣の地域や行政に及ぼす影響も検討している。

(運動習慣を持たない中高齢者への健康づくりのための支援)
 人は運動の大切さやその効果については十分把握しているものと思われる。しかし、日本人の運動習慣者の割合は決して高いものではなく、むしろ1日あたりの歩行数は年々減少している。歩行数減少は運動・身体活動の分野において最も懸念すべき問題であり、早急に重点的な対策を実施する必要がある。運動習慣が無い人へのアプローチを一体どうすれば良いのか?例えば、最近のパチンコ店、ゲームセンターを訪れる客層の多くは高齢者である。朝から晩までパチンコ店で遊技しても1日2,000~3,000円あれば十分足りるのである(1玉60銭、50銭コーナーの設置)。朝10時に来店し、遊技の合間には、仲間とともに休憩所でお茶を飲み、昼食も持参した弁当を仲間と会話をしながら食べるのである。自宅に一人で引きこもっているより遙かに良い。ただ、座りっぱなしで1日過ごしていたら生活習慣病予防にも体力維持にもならない。この人たちに、パチンコ店でなくトレーニングジムを勧めても決して行かないであろう。高齢者を対象とした活動量増加(歩数増加)は、介護予防のためのポピュレーションアプローチとして有効である。ならば、高齢者のコミュニティーの場所となっているパチンコ店を、そのままヘルスステーション化する計画を、パチンコ店と現在検討中である。

インスリン様活性を有する食品成分のスクリーニングと作用機構の解析

教授髙木 勝広

プロフィール

 糖尿病患者は、厚生労働省が調査をするたびに増え続けています。現在、我が国では、糖尿病患者は 890 万人、その予備軍は 1320 万人、合わせて2,210 万人と推定されました(「2012 年 国民健康・栄養調査結果」の推計より)。この数字は人口の約17%を示し、国民の約6人に1人の割合で現在または将来糖尿病に罹るということになり、今や、糖尿病は国民病とも言えます。我が国における糖尿病の 95 %以上は 2 型糖尿病で、これは高エネルギー食の摂食過多、運動不足などの生活習慣の悪化の結果肥満となり、その後インスリン抵抗性(インスリンが効きづらい状態)が引き起こされ、糖尿病が惹起すると考えられます。

 食品由来の低分子化合物がインスリンに似た作用を引き起こすことを科学的に証明すれば、それらを食品として恒常的に摂取することにより、糖尿病の予防や治療に有用であると考えられます。そこで私どもは、インスリンによって発現誘導される転写因子である、ラット enhancer of split- and hairy-related protein ( SHARP ) ファミリー遺伝子の発現誘導を指標として血糖低下作用を有することが知られている食品由来成分のスクリーニングを行ってきました。その結果、大豆イソフラボンのゲニステインや緑茶カテキンの(-)-epigallocatechin-3-gallete( EGCG )を、抗糖尿病効果を期待できる生理活性物質として同定し、その分子作用機序を明らかにしました。

 最近、ワサビの辛味成分であるイソチオシアネートが SHARP ファミリー遺伝子発現とは独立して、糖新生系酵素である phosphoenolpyruvate carboxykinase( PEPCK ) 遺伝子の発現誘導を抑制することを確認しました。そこで現在は、イソチオシアネートによる PEPCK 遺伝子の発現抑制メカニズムを明らかにする研究を行っています。今後は、SHARP ファミリー遺伝子の発現誘導やPEPCK 遺伝子の発現抑制を指標に食品成分から広くスクリーニングを行い、抗糖尿病効果を有する生理活性物質を同定することを目的とします。

呉研究室の研究テーマ

1.ジュニア期の食意識がスポーツ選手の骨代謝及び食欲に及ぼす影響
 スポーツ現場では歪んだ栄養知識をもったり減量・増量などを繰り返していたりする場合が多い。ジュニア期からこのような生活を継続してきたスポーツ選手における骨密度および骨質、または食欲を測定し、その影響を調査する。測定項目は身体組成および骨密度の測定、食事に対する意識調査、月経開始年齢(女子の場合)、活動頻度のアンケートを実施し、血液検査、尿検査による骨質・食欲を測定する。

2.スポーツ種目による的確なテスト或いは簡易体力テストの開発
 たとえば、サッカだとYO-YOテストが体力測定によく使われているようにスポーツ種目の特長をつかめるためにはそれに見合った体力テストが要るはずである。既存の体力テストと開発する体力テストと関連があるかどうかを調べる。また、健康体力テストは運動処方をするためには欠かせないテストである。一方、現場では高い機械や最大努力を発揮しないといけないテストがたくさんある。しかし、高齢な方や体力が弱い人には現実無理な場合が多い。そこで、高い機械や最大努力を発揮しなくても推定できるテストの開発も行う。

3.栄養、運動、閉経などがラット骨格筋のGLUT-4および骨構造に及ぼす影響
 ラットを用いて栄養組成(高脂肪・高たんぱく質など)を変えたり運動(高強度・低強度運動)させたり、閉経(卵巣摘出)させたりして、脂質分析(トリグリセリド、非エステル化脂肪酸(NEFA)、総コレステロール、HDLコレステロール)、骨代謝マーカー(オステオカルシン)、骨組織形態計測、大腿骨と脛骨の骨密度(BMD)、骨塩量(BMC)、骨強度(Bone strength)、糖代謝、GLUT-4などを測定し、運動と栄養による糖の取り込みと骨代謝との関連を調べる。

 以上の研究以外にもさまざまな研究を行っています。松本大学大学院でできない測定などは日本体育大学、早稲田大学、立命館大学、信州大学などで測っているので測定できないものはほとんどありません。実験に対する情熱と社会人としてのマナーや礼儀さがある方は私の研究室に訪ねてみてください。いつでも歓迎です。私の研究室は社会人の方も多いですので社会人の方も気楽にお尋ねください。お待ちしております。

宇宙医学・生理学研究室

准教授河野 史倫

プロフィール

「宇宙を目指して、健康を学ぶ」
 国際宇宙ステーション(ISS)の運用が進み、ヒトが宇宙に滞在する期間も飛躍的に延びました。今後は月面や火星を目指したミッションが計画されています。有人火星探査ミッションのように惑星間の移動になると、宇宙滞在時間が更に延び、物資の補給もできません。火星探査船内に搭載する物資は、予め緻密に決めておかなければいけないということになります。宇宙空間では重力がなく、体を支える必要がないため、筋や骨、循環機能が衰えます。まさに地上でベッドの上に寝たきりになった時と同じ変化が体に起こります。このような身体機能の低下を予防するため、現在はISS内で運動器具を使ってトレーニングを行っていますが、火星探査船に運動器具が搭載できるかは不明です。したがって、健康維持のための何か新しい考え方が必要と言うことになります。

抗重力筋の謎に迫る
 重力下で姿勢を保持するために持続的に活動する筋(抗重力筋)は、高いエネルギー代謝能を保有しています。このような筋の特性は、重力下で発育し生活する過程で自然と獲得されますが、宇宙では特に抗重力筋のサイズや代謝能低下が起こります。しかし、抗重力筋のメカニズムはまだはっきり分かっておらず、重力の無い環境で抗重力筋を維持する方法の確立には未だ至っていません。抗重力筋とそれ以外の種類の筋(速筋)は、運動などに対する適応メカニズムが異なることも示唆されており、現在も詳細は不明なままです。このような謎の解明を目指して、私の研究室では「骨格筋がどのように抗重力筋の特性を獲得するのか」を明らかにするための研究に取り組んでいます。

個人差が起こるメカニズムを応用する
 宇宙で骨格筋を衰えにくくするための考え方のひとつとして、運動効果の個人差に着目しています。同じ運動をしても、効果の表れやすい人とそうではない人がいるように、骨格筋の性質には個人差があります。当然、遺伝的な要因も大きいですが、過去の運動歴などが将来的な筋の”反応性”や”適応力”に影響するのではないかと考えています。例え遺伝子は同じでも、遺伝子を取り巻く環境(エピゲノム)が変化し、運動効果の個人差を生み出しているという仮説を立て、研究を進めています。つまり、宇宙へ行く前に「衰えにくい体質」を作ることができないだろうか、というのが目指すところです。「どんな運動」を「どれだけ」行えば健康を維持しやすいのかが分かれば、宇宙から得た新しい健康づくりの考え方として地上でも役立つと期待しています。

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