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2005/06/20
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郵便局の地域金融機関としての役割 ――「金融システム論」特別講義第5回

6月20日(月)には、日本郵政公社松本郵便局の神津局長から「郵便局の地域金融機関としての役割」というテーマで講義をしていただいた。豊富なデータに基づく内容で、受講生からは、「郵便局が地域に密着した金融機関であることがよく理解できた」「郵政民営化論議の行方に興味が沸いた」との感想が聞かれた。講義の要旨は、次のとおり。
 現在、郵政民営化が国会で議論されているが、郵便局の業務の実態や改革論議の争点はあまり知られていない。郵便局は、郵便、郵便貯金(郵貯)、簡易生命保険(簡保)の郵政三事業の業務を行っており、地域に密着した役割を果たしている。47都道府県のすべての議会で郵政民営化反対の決議がなされていることも知っておいてほしい。この講義では、金融業務である郵貯と簡保に絞って説明する。
 日本郵政公社の使命は、第1に、郵政三事業に関する「ユニバーサルサービス(全国均一のサービス)の提供」である。第2は、「郵便局ネットワークの活用」であり、国の事務の共通窓口としての活用(例えば印紙の販売、国債の元利金の支払いなど)や地域関連施策(住民票の写しの即時交付等のワンストップサービスなど)といった業務も行っている。第3は、「郵便局ネットワークの維持」である。このためには、郵便局を「あまねく全国に」設置し、郵政三事業を一体として行うことが必要であると考えている。
 郵政事業の利用状況をみると、郵便貯金の利用世帯(02年度末)は約4,200万世帯(世帯利用率86%)、簡保利用世帯(03年度末)は約2,800万世帯(同56%)に上っている。また、郵便局数(03年度末)は24,715(うち長野県は668)で、常勤職員数は27万人を超えている。
 郵便局と銀行等の店舗配置状況を比較してみると、全国では銀行等と郵便局はほぼ拮抗しているが、過疎地域に限れば郵便局は銀行等の3倍となっている。採算のとれない過疎地域にも住民の利便性を考え郵便局を設置しているからである。長野県では101の全町村に郵便局が設置されているが、銀行等民間金融機関の店舗がない町村が47と全国で一番多い。郵政事業は独立採算制で、税金を使わないで山間辺地まで店舗展開していることは、地域金融機関として重要な点だと考えている。
 商品・サービスの内容をみてみよう。郵貯は基礎的な金融サービスを提供するのが目的であり、預入限度額が1,000万円に設定されている。郵貯利用状況をみると、個人がほとんどで、あらゆる階層でまんべんなく利用されている。簡保は若い世代には人気がないが、簡易な取扱い(無診査、職業による加入制限なしなど)が特徴で、加入者には「国の保証がついて安心」などと評価されている。また、郵貯は10月には投資信託の取扱いを開始する。
 資金運用面では、かつては資金運用部に全額預託していたが、その資金の貸出先である財政投融資機関の資金使途(出口)に問題があるということから、入り口である郵貯・簡保の民営化論議が出てきたのは心外である。現在では、郵貯資金の75%、簡保資金の40%強が国債購入に当てられており、民営化して郵便局の経営が立ち行かなくなった場合に保有国債をどうするのかという議論が出てこよう。
 以上のように、郵便局は利益第一主義ではなく、地域密着型で業務を行っている。こうした実態を認識したうえで、今後の郵政民営化論議の行方に注目してもらいたい。

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