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2005/06/27
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中小企業金融における政府系金融機関の役割――「金融システム論」特別講義第6回

6月27日(月)には、中小企業金融公庫松本支店の工藤支店長から「中小企業金融における政府系金融機関の役割」というテーマで講義をしていただいた。「中小企業金融の実態や全体像がわかった」「民間金融機関と政府系金融機関の役割の違いがよく理解できた」との感想が多かった。講義の要旨は、次のとおり。
 中小企業は、日本の企業数の99.7%、全従業員数の70%を占め、日本経済の活力の源泉であり、地域経済を支える大きな存在である。長野県では中小企業のウエイトはさらに高く(99.8%)、その9割が小規模企業である。中小企業といっても多様で、大手企業を上回る収益力、財務体質を持った企業もあるが、総じて財務基盤は脆弱であり、金融調達力も弱いというのが実情である。
 中小企業金融の現状をみると、資金調達面では、借入金の依存度が平均35%強であり、小規模企業ほどその割合が高い。社債など直接金融は数%とごくわずかに過ぎない。借入先(構成比)をみると、地銀・第二地銀と都銀がほぼ30%で拮抗、信金・信組が17%を占め、政府系金融機関は9%弱となっている。一方、業態別の中小企業向け貸出比率は、都銀が約60%、地銀が70%強、第二地銀が80%強と高水準で推移しており、業態にかかわらず中小企業向け融資が重要な位置を占めているのが窺える。また、中小企業は、担保、保証、金利といった借入条件が、大企業に比べて不利である。ただ、金融機関の貸出姿勢にも変化の兆しがみられる。
 中小企業向け政策金融機関としては、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫が設立されている。これら中小3機関の役割分担をみると、国民生活公庫は小規模・零細企業を対象とする融資業務、また中小公庫は中小・中堅企業向け融資業務のほか、証券化支援業務や信用保険業務を行っている。一方、商工中金は、中小企業等協同組合等の組合や組合員を対象に貸付、手形割引、預金業務と、銀行とほぼ同様の業務を行っている。
 それでは、政府系金融機関の役割について中小公庫を例にとって説明しよう。中小公庫は、04年7月から証券化支援業務(証券化の手法による無担保資金供給及び供給支援)や信用保険業務(信用保証協会等が行う債務の保証についての保険)も行っているが、ここでは支店の主要業務である融資業務に絞って説明する。融資業務面における第1の役割は、一般の金融機関が供給困難な資金を供給する「補完金融」である。具体的には、長期資金を専門的に供給し、また事業資金を景気動向等に左右されず安定的に供給している。第2の役割は、民間金融機関だけでは対応できない分野に対し、資金を供給して「政策誘導」を図ることである。公庫は、国の中小企業政策に基づいて、多様な特別貸付を行っている。このほか、リレーションシップバンキング機能の強化に取り組んでいる地域金融機関との間で、貸付の相談、情報支援、協調融資等により連携を深めて地域の活性化に努めている。さらに、長年にわたり蓄積してきた中小企業のデータや審査ノウハウをもとに、企業診断、事例提供、マッチング、経営改善提案など、コンサルティング機能を発揮している。
 長期資金専門の金融機関として長年培った中小公庫の審査能力(目利き能力)は、民間の金融機関からも信頼を得ている。こうした強みを活かして、地域金融機関とも連携しつつ地域金融の円滑化に貢献していきたいと考えている。

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