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2005/07/04
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地域の金融機関としての長野県信用組合の現況と役割――「金融システム論」特別講義第7回

7月4日(月)には、長野県信用組合の理事長をこのほど退任されたばかりの堀監事から「地域の金融機関としての長野県信用組合の現況と役割」というテーマで講義をしていただいた。受講生からは、「顧客の利便性を重視し、業務の多様化や新たなサービスへの取組みを進める地域金融機関の姿がよく理解できた」との感想が多かった。講義の要旨は、次のとおり。
長野県信用組合(けんしん)は、設立後51年目になる。けんしんは、お客様(預金者及び利用者)の安全性と利便性を第一に考え、「信用」「信頼」の構築に努めて経営の健全性を確保し、地域社会に貢献することを「企業倫理」や「経営理念」に掲げている。
 金融機関は、現在、健全性の面では不良債権の状況と自己資本比率で評価される。しかし、資金量が増加している金融機関は一般的に増資をせずに自己資本比率を上げていくのは厳しいし、また業績不振企業を支援しようとすると不良債権比率は上昇してしまうという面があることにも留意が必要である。
 金融機関の状況をみると、業務規制の緩和が進んでおり、ユニバーサルバンクに向かっている。96年以降、金融機関の破綻や合併・再編が相次いだが、合併、再編は今後も続き、二極化が進んでいくとみている。こうした展望の下に、9月からATMに生体認証(手のひら静脈認証方式)を導入するなど、「預金を守る」という預金者重視の体制を推し進める。また10月には手数料収入が得られる証券仲介業務に参入する計画であるし、12月に規制緩和が行われる生保業務への参入も検討している。02年以降、消費者主権の時代に入り、消費者が金融機関を選ぶ時代となった。消費者のニーズが多様化している中で、顧客満足度(CS)を高める戦略が重要になってきている。
 こうした中で、銀行と信用組合は同質化現象が進行しており、信用組合は規模が小さいだけと見る人もいる。銀行は株式会社、信組は組合員の相互扶助をメインとするというように形態は異なるが、信用組合も規制緩和により銀行と同じような業務ができるようになった。また、信金との違いについては、信金は会員以外からも預金の受入れが可能である一方、信組は組合員や地方公共団体などに制限されているが、貸出先には大きな違いはない。
 社会構造面では、豊かな社会になるにつれて「助け合う、支え合う」という精神が後退する一方、情報化やグローバル化の進展、主婦の労働力化などが進む中で、安全や環境への関心が高まった。信用組合にとっては、貸出先が中小の商工業者から成長企業や個人にシフトし、地域の活性化が課題となっている。県内企業の資金需要が低迷する中で、進出してきた大企業は県内では資金を調達せず、また県内企業の上場が相次ぎ間接金融から直接金融へのシフトが進行している。貸出市場が縮小する状況下では、貸出競争により金利が低下し、利益が上がらない。このため、各金融機関とも手数料ビジネスに注力している。
 協同組織金融機関は、利潤追求が目的ではないが、収益力を高めないと良質なサービスを供給するという社会的使命を果たせない。金融機関が倒産すれば、大口の預金者だけでなく、借り手が資金調達先を失うことにもなりかねない。したがって、金融機関にとっては健全性が重要である。同時に、金融機関はサービス業であり、グローバルスタンダードを念頭に、IT化、新規サービスへの進出、ディスクロージャーなどに取り組まねばならないと考えている。

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