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2008/06/10
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日本栄養士会会長中村丁次先生特別講演会「これからの管理栄養士に期待すること」

松本大学主催、社団法人長野県栄養士会共催の特別講演会が5月22日(木)、2号館232教室で開かれた。中村先生は現在、二期目の社団法人日本栄養士会長、神奈川県立大学保健福祉学部長の要職にありながら、ご多忙の中、松本に駆けつけていただいた。
 先生は昭和47年徳島大学医学部栄養学科卒業後、聖マリアンナ大学付属病院栄養部門において30年に亘って、患者の栄養指導にあたってきた。その豊富な臨床経験から管理栄養士は「給食管理や調理」の職務から栄養学を体系的かつ本格的に勉強をした栄養の専門家が病棟のベッドサイドにいるべきという持論を展開している。今回は、主に管理栄養士を取り巻く現状や、日本栄養士会の取り組み、そして今後の管理栄養士の在り方などについて講演された。
 最初に、日本人の食をめぐる現状で管理栄養士が管理している施設の入院患者や福祉施設にいる高齢者の中にはやせて低栄養状態(malnutrition)になる人が多い。従来の方法を変えて各種栄養補給法を体系化し、総合的な栄養管理を行う必要が生じその手段としてマネジド・ケアが導入され、それに基づく栄養管理の必要を問い、これからの病院は包括的栄養管理のシステム化が望まれるとしている。実際には患者の健康、栄養状態の評価と判定、栄養の介入計画を立て栄養ケア、栄養教育による介入、効果を判定して栄養管理の修正を行う。これからの栄養管理は病院から地域へ移行するので病院、在宅介護事業所等の他職種との連携が大切としている。平成18年度診療報酬改定において、介護保険や医療保険に栄養管理に関する加算として、栄養管理実施加算が一日あたり12点付くなど、医療現場における管理栄養士の役割には大きな変化が見られる。そこで日本栄養士会は各国の栄養士会と連携して栄養管理の概念と方法を国際的に標準化する作業を行っているそうである。四月から特定健診・特定保健指導が導入されたが、標準化、アウトソーシング化などを課題としている。保健指導の主な実施者の範囲として医師、保健師、管理栄養士が挙げられるが、実際、管理栄養士・栄養士の強みとしてメタボリックシンドロームの代謝や成因、さらに改善方法がエネルギーや脂質代謝の観点から理解できるとし、一方、弱みとして生活の理解や改善ができない、信頼関係を築くのが苦手であることなどを指摘している。21世紀における管理栄養士、栄養士の理念と目標で、いまだに解決できない問題として栄養診断の構成と記述法を挙げている。また、現在の日本栄養士会のグランドデザインとして縦軸に保健、医療、福祉の連携、横軸に低栄養障害と生活習慣病対策をあげ一次予防(保健)保健指導、二次予防(医療)、在宅における栄養食事指導そして三次予防(福祉)、介護予防栄養相談をあげ科学的エピデンスに基づき、標準化された方法で実施することをあげた。
 最後に、現在、準備中の第15回国際栄養士会議(ICD2008)の組織委員長の立場から9月9日~11日の期間はパシフィコ横浜で国際栄養士会議=ICD(国際会議)が開催されるというアナンスメントがあった。

本稿は、健康栄養学科学科長村松 宰教授が寄稿した、学報「蒼穹」第91号から掲載しています。

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