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2012/01/23

「お金の地産地消」に腐心する地域金融機関の現状について学ぶ 総合経営学科「地域金融事情」(太田勉教授担当)連続特別講義

総合経営学科の2011年度後期講義「地域金融事情」では、地域金融機関の役割や特徴を理解し、その利用法を身につけることを狙いとして、地元金融機関等から幅広く講師をお招きして10回にわたる実践的な特別講義を実施しました。この連続特別講義は、2005年度から7年間続いています。講義内容を総括すれば、次の通りです。



米国リーマンショック後の金融資本市場の混乱に伴う経営悪化を克服し改善傾向をたどっていた地域金融機関は、2011年には東日本大震災・原子力発電所事故、欧州政府債務問題の再燃、歴史的な円高などのショックに相次いで見舞われました。今後を展望しても、人口減少時代(人口オーナス)に入った日本では、「地域に限定されたマーケットの中で営業する地域金融機関の経営は厳しさを増す」ものとみられます。



こうした経営環境の下で、地元金融機関の多くは優良な貸出先企業の減少・海外シフトや期待をかける個人向け住宅ローンの競争激化に直面し、中長期的な視点に立った経営方針(ビジネスモデル)の見直しを迫られているようです。



経営動向を具体的にみると、「地域の金融ニーズに適格に応えていく」という経営理念の下で、「お金とともに知恵を貸す」(顧客に役立つ情報・サービス提供の充実などによって地域企業の経営支援を強化)とともに、医療・介護、環境、観光、農業などの各分野における資金需要の掘り起こしや地域活性化に取り組むなど、「お金(貯蓄)の地産地消」(地域のお金を地域に還元)に腐心しているように窺われました。一方、グローバル化の流れを見据えて、地元企業のアジアへの進出支援に注力する動きもみられています。



個人向けサービスに関しては、投資信託・保険商品販売等による手数料収入の増強を図る動きが広がっています。今後を展望すれば、「世界の成長エンジンが先進国からBRICS、さらにその他の新興国等へとシフトしていく中で、成長率の高い国や企業を見極め、投資家に適格なアドバイスをするのが金融機関の役割」であり、そのためには「コンサルタント機能が果たせる高度な専門知識を持った人材の開発・育成が最重要課題」といった臨場感あふれる説明に、多くの学生が刺激を受けている姿が印象的でした。



リーマンショック後の苦境の中で大学進学を決断した3年生の多くは、就職活動にも役立てようと地元金融機関の講義を意欲的に受講しており、例年お招きしている特別講師の方々からは「今年の受講生は目の輝きが違う」といった嬉しい感想をいただきました。今後とも、学生がビジネスの世界に触れ、啓発されるような実践的な学習の機会を企画していきたいと考えています。




本稿は、総合経営学科 太田勉教授より寄稿いただきました。
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