発達障害などの発達困難を有する非行少年の現状と地域生活移行支援に関する調査研究

概要

現代の子どもを取り巻く様々な環境要因により、発達障害の診断・判定に限らず身体症状・身体の不器用さ等、発達に何らかの困難を有する子どもたちが少なくありません。
少年非行に関わる児童自立支援施設や少年院等の入所少年にも同様の傾向が見られます。発達障害等の発達困難が直接的に不適応・非行等に至るわけではなく、施設等の入所までに発達障害等に応じた適切な発達支援を受けられず、貧困、養育放棄(ネグレクト)、無理解、被虐待やいじめ等の劣悪な環境で育ち、そのことが非行や少年院入院の一因になっている者が一定数いることが予想されます。
様々な負の要因が絡み合った結果の現れの一つとして、虞犯・非行等の「不適応状態」にある彼らは発達の機会から阻害されている可能性があり、教育的ニーズは高いといえます。彼らの成長・発達や自立に向けては本人・当事者の「声」に丁寧に寄り添い、地域・家庭・学校や福祉等の関係諸機関の連携による適切かつ継続的な支援が求められています。
課題解決のためには、少年鑑別所や更生保護における支援の現状を明らかにすることが不可欠であり、また、実際に少年院等を経験した発達障害やそれに類似した発達に困難を抱える本人に対する立ち直り・地域移行支援に関する調査を通して、発達障害等と非行を併せもつ青少年の発達支援や健全育成の課題を明らかにすることが必要と考えられます。
それゆえに本研究では、非行と発達障害等の発達困難を有する本人・当事者の立ち直りに関する面接法調査、および少年非行の矯正教育・更生保護機関である少年院・少年鑑別所・保護観察所・更生保護施設等の職員調査を通して、非行少年の立ち直りに必要な発達支援と地域移行支援の課題を明らかしていくことを目的としています。