運動効果獲得の個体差を理解するための骨格筋エピジェネティクス研究

概要

運動によるエネルギー代謝の増加が、肥満や糖尿病などを予防・改善することはよく知られています。一方で、同じように運動を行っても、その運動効果の表れ方には個体差があることもまた事実です。しかし、このような現象がなぜ起こるのかを説明できる理論は、現在のところ解明されていません。そこで我々は、骨格筋において「個体差はエピジェネティクスによって引き起こされる」のではないかと仮説を立てました。
エピジェネティクスは、遺伝情報に依存しない遺伝子の転写制御であり、遺伝子を取り巻く環境(エピゲノム)が転写応答の強弱に影響を与えることが知られています。運動効果の個体差が発生するメカニズムとして、「過去に受けた生理刺激」が「エピゲノム変化として骨格筋に蓄積」し、将来的な運動に対する応答性に影響を及ぼす可能性があると考えています。
本研究では、運動や運動不足、食習慣、重力刺激がどのように骨格筋のエピゲノム変化を起こし遺伝子の応答性に関わるのか?という点に着目し、個体差発生のメカニズム解明に迫ります。スポーツや運動による健康づくりにおいて、「どれくらいの運動習慣があれば病気になりにくいのか?」、「どのようなパラメータを評価すれば、将来の生活習慣病リスク診断や健康寿命予測が可能か?」という疑問は、究極的な到達点と言えます。本研究は、それらの疑問を解決するための切り口となる研究に位置づけられます。