審判員のためのストレス対処モデルの構築

概要

どのようなスポーツ競技にも、独自に定められた競技規則、いわゆる“ルール”というものがあります。それを選手とともに守り、その「判断基準」となり、試合のコントロ-ルをする役割を果たす人が審判員です。各種競技スポーツにおいて、審判員は必要不可欠な存在と言え、また、彼らの判定が試合結果を左右することもあります。そして昨今では、審判員の判定に関連する多くの問題が取りざたされるようになってきており、彼らを取り巻く現代の状況は、まさに「審判受難の時代」と言われています。実際、サッカー競技の国際審判員の方は著書の中で、「(審判員は裏方的な仕事でありながら)選手、サポーター、メディア、アセッサー(レフェリングの評価者)などからの多様なプレッシャーやストレスがある」と書いています。
このような審判員を取り巻く状況を鑑み、本研究では、①上級の審判員にかかるプレッシャーやストレスの発生機序やその実態を明らかにする、②審判員に判定される側である選手や指導者の視点から、両者の“関係性”から生じてくるプレッシャーやストレスの原因について明らかにする、③本研究の結果から “審判員のためのストレス対処プログラム”を構築する、という3点を目的としました。
これまでスポーツ心理学領域における研究の対象は、専ら“競技者”や“指導者”であり、“審判員”を対象とした学術的な研究は非常に数少ないと言えます。本研究は、「ストレスやプレッシャーに対する対処法を学びたい」という現場の審判員の方々の要請に応えることができ、また還元できる内容を多く含む、実践的かつ独自性の高い研究になると考えられます。