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2020/04/07
  • 教育研究情報

健康栄養学科 浅野助手の論文が国際学術誌「Biochemistry and Biophysics Reports」に掲載

本学人間健康学部健康栄養学科の浅野公介助手の論文が、国際学術誌「Biochemistry and Biophysics Reports」に掲載されました。つきましては、その論文の概要について浅野助手からご寄稿いただきましたので、ご紹介いたします。


健康栄養学科
助手 浅野 公介

SHARP-1 遺伝子は、血糖低下ホルモンであるインスリンにより誘導される転写因子 SHARP-1 を産生します。長寿遺伝子であるSIRT1 遺伝子は、脱アセチル化酵素タンパク質 SIRT1 を産生します。また、これらのタンパク質は、肝臓における糖代謝を調節することに重要な役割を担っています。そこで、私たちは「肝臓の糖代謝において、これらの遺伝子の発現1)が調節される際、お互いが影響しあっているのではないか?」という仮説を立て、研究を行いました。そして今回、以下のような研究結果を「Biochemistry and Biophysics Reports」に発表しました。

まず、SIRT1 が、SHARP-1 遺伝子の発現に影響を与えるかを調べるため、肝臓の培養細胞を用いて、SIRT1 の阻害剤、および活性化剤で処理を行いました。その結果、SIRT1 阻害剤は、SHARP-1 遺伝子の発現量を増加させたのに対し、SIRT1 活性化剤はそれを減少させました。つまり、この結果は、SHARP-1 遺伝子が発現することに、SIRT1がブレーキをかけていることを示しています。

次に、SHARP-1 が SIRT1 遺伝子の転写活性に影響を与えるかを調べるため、肝臓の培養細胞を用いて、解析を行いました。その結果、SIRT1 遺伝子の転写活性は SHARP-1 によって抑えられました。さらに解析を進めた結果、 SHARP-1 によるこの抑える効果には、SIRT1 遺伝子プロモーター2)領域の E box 配列 (5'-CACGTG-3')が必要であることがわかりました。

以上より、私たちは、SHARP-1 遺伝子と SIRT1 遺伝子の発現には負の相関関係がある(図1)、さらに、SHARP-1 は SIRT1 遺伝子プロモーター領域の E box 配列を介して、SIRT1 遺伝子の転写を抑制する(図2)と結論づけました。

今回の発見は、「肝臓で血糖値を一定に保つために、様々な遺伝子の発現がどのように調節されているのか?」の解明に、役立っていくと私たちは考えています。

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図1)SHARP-1 遺伝子と SIRT1 遺伝子の発現には負の相関関係がある。

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図2)SHARP-1 は SIRT1 遺伝子プロモーター領域の E box 配列を介して、SIRT1 遺伝子の転写を抑制する。

1)遺伝子発現

ある遺伝子からmRNAが合成(「転写」という)され、それをもとにタンパク質が合成(翻訳という)されることを遺伝子が発現している、といいます。

2)プロモーター領域

遺伝子の上流にあり、転写を制御する領域をいいます。転写調節因子群の働きにより、転写基本因子群とRNAポリメラーゼがプロモーター上に転写開始複合体を形成し、転写が開始されます。

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