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令和6年能登半島地震の被災地を調査して

―長野県が学ぶべき防災の教訓―

地域防災科学研究所
観光ホスピタリティ学科
教授  入江さやか

1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」では、死者241人(災害関連死15人含む)、住家被害10万8,479棟という甚大な被害が生じ、今も8,000人以上が避難所での生活を余儀なくされています(3月15日現在)。

道路状況が改善してきた2月3・4日、山梨大学などの研究者とともに石川県輪島市、珠洲市などで被害調査を行い、2月20日に学内で開催された研究発表会で報告しました。2月中旬から1カ月かけて、東京大学などと共同で、避難所で生活する被災者を対象にアンケート調査を行いました。アンケートは対面で行い、地震発生時の避難行動や、被災後の情報入手方法、避難所の生活環境などについて被災者の生の声を聞き取りました。

能登半島地震を起こしたのは、陸から海底にかけて延びる「活断層」でした。長野県にも「糸魚川―静岡構造線断層帯」を筆頭に、数多くの活断層が存在しています。また、今回は中山間地などで多くの集落が孤立しました。内閣府調査(2013年)では、長野県内には災害時に孤立する可能性のある集落が1163か所あり、全国で最多です(石川県は179か所)。

政府のガイドラインでは、避難所の運営は原則として被災者自身で行うことになっていますが、現地の避難所には高齢者が多く、外部からの支援が不可欠です。今回の地震では木造住宅の倒壊で多くの命が失われましたが、長野県の住宅の耐震化率は83%(2018年)で、全国平均(87%)を下回っていることも忘れてはなりません。

能登半島地震の被災地に心を寄せるとともに、私たちはその被害を「わがこと」として受け止め、家庭や地域での防災対策を進めていかなければならないと思います。

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3メートル以上隆起した輪島市の漁港 海底が露出している(2024年2月3日)

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石川県珠洲市宝立地区の木造住宅被害(2024年2月4日)

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