2026
09.24
教育研究情報/アウトキャンパス・スタディ事例
世界遺産「石見銀山遺跡とその文化的景観」を対象にゼミ演習を行いました
観光ホスピタリティ学科
専任講師 脇園 大史
2026年9月10日~15日、脇園ゼミでは、島根県大田市に位置する世界遺産「石見銀山遺跡とその文化的景観」を対象に、ゼミ演習を行いました。
今回の演習は、鉱山跡や町並み、街道、港などが相互につながって形成する世界遺産の総体としての価値を理解するとともに、その価値を伝える観光のあり方を考えることを目的としました。特に、銀の採掘跡である龍源寺間歩とその周辺域に着目し、地域の方々とのワークショップや観光客の行動調査に取り組みました。
演習初日は、石見銀山みらいコンソーシアムの金田さん・伊藤さんから、大森町の歴史と現状、龍源寺間歩の整備状況についてお話を伺いました。その後、石見銀山資料館と石見銀山世界遺産センターを見学し、石見銀山ガイドの会の皆さまのご案内で、龍源寺間歩とその周辺域を歩きました。

金田さんによる概要説明

清水谷製錬所跡

龍源寺間歩坑道内

佐毘売山神社
2日目の午前は、地域の方々にご参加いただき、龍源寺間歩周辺域を五感で捉えるワークショップを実施しました。ワークショップでは、現地を歩きながら気づいた「感覚」を記録・共有し、現在の整備では十分に伝えきれていない魅力や可能性を探っていきました。参加者それぞれの「感覚」を共有した後に再び現地を歩き、その魅力を来訪者に伝えるためには、どのような工夫が必要かを考えました。地域の方々からも好評をいただき、多様な気づきを持ち寄る充実した時間になりました。


ワークショップの様子
2日目午後は、観光客の行動調査を実施しました。学生たちは複数の地点に分かれ、観光客が各地点を通過するペースや、解説板などの価値を伝える要素に目を向けているかを観察・記録しました。また、観光客への聞き取り調査も行い、龍源寺間歩周辺域での観光体験や、見学を通じた遺跡の価値への理解度について伺いました。また、3日目の午前も、引き続き観光客の行動調査を実施しました。この日はあいにく雨の中での調査となりましたが、粘り強く取り組んでくれた学生たちには感謝です。

観光客の過ごし方について調査

聞き取り調査も併せて実施
3日目午後は、それまでの体験や調査を踏まえ、龍源寺間歩周辺域の今後のあり方について全員で議論しました。各地点の整備の課題を整理したうえで、自分たちが五感で捉えた魅力をどのように伝えられるか、さらに、何をどのように伝えることが来訪者の理解を深め、現地での行動の変化につながるかを検討しました。実際に現地を歩き、観光客の様子を観察したからこその意見が交わされ、活発な議論となりました。


調査に関する総括的な議論の様子
何より今回の演習を支えたのは、学生たちの主体的な取り組みです。毎晩のように調査班ごとに集まり、その日の振り返りや翌日の調査方針を話し合いました。調査の中で生まれた疑問や課題を共有し、学生同士で相談しながら、よりよい調査にしようと工夫を重ねていました。現地で生まれた疑問や課題を持ち寄り、それにグループで対処する過程も、今回の演習における大切な学びとなりました。

調査班ごとの打ち合わせ風景

調査中も適宜情報を共有しながら進める
また、期間中には大森町内の寺院で坐禅を体験させていただいたほか、銀や銀鉱石の積出港であった鞆ヶ浦で海岸清掃を行った後SUPも体験しました。また、銀山を支えた港町である温泉津にも宿泊し、歴史ある町並みとともに近年の新たなまちの動きや活力に触れました。

榮泉寺での坐禅体験

鞆ヶ浦を清掃後にSUP
鉱山跡から町並み、港へと足を運び、地域に滞在することで、学生たちは個々の場所の魅力やそれらのつながりが生み出す世界遺産全体の価値に向き合うとともに、文化遺産が現在の暮らしや営みと結びついていることを実感できたかと思います。そして、文化遺産と地域が生み出す総体的な価値を活かす観光のあり方にじっくり向き合う、密度の濃い演習となりました。
本演習で得られた成果は、今後分析を進めたうえで、今年度末に開催される大森町研究発表会で地域の皆さまに報告するとともに、龍源寺間歩周辺域の価値を伝えるための整備・活用の指針づくりにつなげていく予定です。
脇園ゼミでは、文化遺産と地域や人々との関わりに着目し、その歴史や文化をどのように守り、活かし、伝えていくかを考えています。現地で自身の感覚を働かせ、地域の方々の話を聴き、調査を通じて人々の行動や受け止め方を確かめる。そして、そこから見えてきた価値や課題をもとに、地域の方々とともに具体的な提案を考え、実践につなげていく。こうした学びを通じて、文化遺産の価値そのものに触れる機会をつくり、それを育んだ地域との関わりを深める観光の可能性を探り続けています。
末筆ながら今回の演習を受け入れ、学生たちの学びを支えてくださった石見銀山みらいコンソーシアムの金田 郁也さん・伊藤 俊一さん、ならびに地域の皆さま、関係者の皆さまに、心より御礼申しあげます。
